演劇講座 第1回「演技の基本

 演技の基本はズバリ「感じた事を感じた分だけ表現する」です。

 おおっ、第1回目スタートから全て言い切ってしまいました、基本も何も役者さんに期待するのはこれだけです、ではさようなら。
 …なんて言ってては怒られそうなんでちょいと説明を。

 よく演技の基本は「発声」「滑舌」なんて言われ演劇を始めると訳もわからず「あえいうえおあお」なんて発声練習や腹式呼吸の練習をします。また、ちょっと演劇を経験してくるとセリフの言いまわしや間の取り方、声の使い方なんて事が気になってきます。

 感じた事を感じた分だけ表現できないうちはこんなもん練習しちゃいけません。たまたま忘年会の出し物で演劇でもやるんで付け焼刃でテクニックをちょっと身につけようってんならともかく、これからずっと演劇をやっていけば、長くやりゃやった分だけ「発声、滑舌」なんて勝手に身についていきます。
 それより、基本と思って演劇を始めたばかりの頃から「発声」「滑舌」などのテクニックを一生懸命練習する事で、本番の演技でも「テクニック」が気になって、「感じた事を〜」の感じて欲しい部分が感じられず、本来持ってるはずの役者さんの魅力が演技で出せなくなっちゃいます。

 で、「感じた事を感じた分だけ」の、何を役者さんに感じて欲しいかと言うと、これがややこしい話で、舞台上で演技してる時、役者さんの中には役者さんのやってる役と役者さん自身の2人が同時に存在して、そのどちらも「ちゃんと感じる事は感じてる状態」を感じて欲しいわけです。

 文章にするとホントにややこしいですね。

 役は台本のストーリーにしたがって色々感じて行きます。演じてる役者さんにとってはその役の気持ちも自分の気持ちとイコールです、これだけなら分かりやすいんですが、そこには役者をやりたい私が演技をしてる瞬間の自分も存在し、その時の役者さん自身の気持ちも当然イコールです。すると何が起こるかと言うと、1人の役者さんの中に同時に2人の気持ちが両方本物として存在します。

 例えば、悲劇のエンディングで主役をやっていたとしましょう、あなたの役は愛する人を亡くし「ジュリエット、なぜ死んだんだ〜っ」と猛烈に悲しんでいます、ところが役者のあなたは幕がしまる時の観客の拍手にこれ以上無い満足感にひたっています。

 「役の悲しい気持ちも嘘では無く、同時に自分自身の満足感もちゃんとある」

 全く相反する感情がどちらも本物として役者の中で存在します。これを舞台上でずっと役者さんには感じていて欲しいわけです。

 さらにこれには相乗効果もあって、お互いの気持ちがもう一方の気持ちをさらに盛り上げる何て事もしてくれます。

 感じる事が出来たなら、やりたい事が出てきます、やりたい事をやりたい分だけやれば「感じた事を感じた分だけ表現する」の出来あがりです、なんて簡単。
 色んな邪念をなくし、素直に自分の気持ちをさらし、気持ちよく楽しく演技しましょう。

 せっかく新になったので分かりやすく書こうと思ったら、やっぱり分かりにくくなっちゃいました、どーもすいません。
てなとこで今回はさようなら。

(2000年8月6日)

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