演劇講座 第3回「目から星を出す方法(感じ方について)

 またまた奈良県在住の方よりこのコーナーにメールをいただきましたが、すっかり文字化けしてまして、読めませんでした。どうもありがとうございます&すいません。勝手に応援メールと勘違いして大張りきりの第三回!

 演技してるとき目から星をキラキラといっぱい出しながら演技してる役者さんはなかなかカッコイイものです。その逆にどんよりと濁った目で演技してる役者さんには魅力を感じにくいものです。

 演技をしている時の役者さんの中には、役者さん自身の気持ちと、その時演じている役の気持ちが同時に存在します。一般的に演技してる時には役者さん自身の気持ちは隠して役の気持ちのみを表現しようとしています。しかし完全に自分自身の気持ちを隠し通す事はまず無理です。
 また、私が演出する時は、この『役者さん自身の気持ち』も隠さずに表現して欲しいと思ってます。

 例えば新人が「人前に出てセリフを喋るのはとても照れるなあ」などと感じながら稽古をするとその「照れてる気持ち」は一生懸命役をやってるつもりでも、すっかり演技に反映されます。「稽古不足で…」とか「まだヘタクソなんで…」なんてのも分かりやすい気持ちです。
 本人が意識してないにもかかわらずこの時「役の気持ち」と「役者自身の気持ち」を同時に表現しています。練習するにしたがって、テレや引いた気持ちは取れ「一生懸命に役の気持ちになっていよう」というチョット前向きな気持ちが見えてきます。はたまた「このセリフはこうしゃべって、こんなイントネーションで」なんて考えが見える時すらあります。

 ただ、照れながらやってる演技なんてほとんどの場合見ていて楽しい物じゃありませんし「イントネーションが…」などとやってたらどんどん濁った目になっていっちゃいます、そこで役者さんは気持ちのコントロールをする事になります。

『演技は楽しく』
 まず演技をしてる時というのは、学芸会や人数合わせのスタッフの代役を除けば、役者をやろうと思ってる人が役者をやってる時間ですから楽しく思ってもらわなきゃいけません。

 ただ、楽しく思えったって楽しくないものは楽しくないし、「これは楽しいはずだ」なんてどっか間違ってます。しかし、海賊船の稽古でも新人達だったり、演技が煮詰まって来たりすると「楽しくなく、苦しい」気持ちになって稽古してしまうこともあり「楽しくやってよ」とダメだしすると「つらいけど一生懸命に楽しく思おう」なんて変な気持ちになり「楽しく思ってる」ように見える演技を「つらい気持ちで」一生懸命にやってたりします。
 本物の自分自身の気持ちの切り替えなんで、とても難しいですが、なんとか楽しい気持ちで演技に挑んで欲しいものです。

 じゃ、楽しく思うためにはどうすればいいんでしょうか。
 まず、いい演技、上手い演技をしようとする気持ちを捨て、昔やった〜ごっこ(私の世代なら忍者ごっことか)のつもりになり、「今からロミオごっこ、とかジュリエットごっこの時間」と思っておきます。
 さらに不安があっては当然楽しくなりません、セリフはしっかりと暗記し、自分なりの役の解釈(いずれやりますが性格分析などの役作りとはチョット違います)もはっきりさせ、現在できるだけの不安は取り除きます。

 さらに「私はまだ下手だから」なんて思ってても楽しくありません。ここはすっぱりと「私はヘタだ、どうだすごくヘタなんでビックリしたろう」くらいは居直ります。またまた居直りついでに「台本もらったばっかりでどうしろってんだ」とか「煮詰まってるんだからしょうがないじゃないか」なんてのも居直っときましょう。

 さていよいよ演技するぞっとなった時には、気持ちを「さあ、待ちに待った私の出番、かんばろう!」と盛り上げておき、演技をします。

『自信を持って』
 自信を持ってやってない演技ほど見てて背中がむず痒くなる物はありません。色んな不安は全部居直りましょう。「発声か悪い?いいじゃないかヘタなんだから」「滑舌が悪い?いいじゃないかヘタなんだから」「セリフの解釈がおかしい?いいじゃないか俺はこう思ったんだから」と居直り自信マンマンで下手な演技をしましょう。

『勘違い』
 ここまで出来たら演技中に「みんな俺の演技に圧倒されて感動してるぞ、ウヒヒヒ…」と勘違いしときましょう。

『楽しく、自信を持って、勘違いしながら』演技できたならば、もうかなりの量の星が目から出てるはずです。

 『演技を試験や能力テストを受ける時のような気持ちでやるのをやめて、台本のシチュエーションの中を、自分の役で遊ぶ、これ以上ないくらい精一杯夢中になって遊ぶ。』

 こんな気持ちで演技に挑んで欲しいと思います。

う〜む、今回もまとめがおかしい。「なんのこっちゃ」と思いながら読んでる皆さん、ぜひ質問メールなどお寄せ下さい。

(2000年8月14日)

Copyright © 1990-2008 kaizokusen II All rights reserved.